ネジ1本、3万円のお話
こんにちは!
題名を見て「んん?」と興味を持った方も少なくない(はず)と思います。
本日は、ギターの販売価格や価格構成などの仕組みを、
皆さんがホームセンターなどで1本数円~数十円で購入している(出来る)ネジの話を例にしたお話です。
っとその前に、現在HATAでは・・・
レスポールタイプと言われるギターや、PRS(ポール・リード・スミス)というブランドのギターに合うノブの設計を行っています。
特にPRSというメーカーさんのギターは、非常に拘り(コダワリ)が感じられる作りをしています。
例えばですが「なんてことないネジ一本すらオリジナル製品」を使用しています。
その他、各パーツは勿論、独自のこだわりが他ギターメーカーと一線を画しています。
そして販売価格は最高クラスの「プライベートストックシリーズ」では100万円~数百万円という価格で販売されているギターです。
■さてここで、ギターの好き嫌い関係なく「一つの製作品」として⬆この価格は高いと思いますか?
一般的に販売されているギターは、
これらパーツなど市販品を使用していても20万~60万円程度という事を考えてください。
ネジを始めブリッジやペグ、ノブ、ストラップピンなど、パーツだけでも相当な点数がオリジナル。
その他の技術面も凄まじいオリジナル尽くしです。
私は素材や物は違えど同じ製造業を行い、
何万という方々との取引を行ってきた私の考えとしては・・・
「安すぎる!!」が感想です。
■ではここで分かりやすい(はず)説明をします。
皆さん、どこかにオリジナル製品のオーダーを頼んだことはありますか?
「オーダー品は高価」という、この「高価」って言葉ですが、
ただ高いという意味ではないです。
市販品にあるほぼ同じ品を購入する時の価格と、
自分のオリジナルで作ってもらう品とを比べた時に「高価」という意味が正解です。
では、
仮に「ネジ1本だけ作ってください」とお願いするとしましょう。
材質は一番安価な材料、形状も一番簡単な形状の品だとして、
弊社では恐らく一式費用30,000円~頂きます。
これが会社毎に存在する「責任、納期、精度、ニーズに全て対応する取引」でのいわゆる一式費用の底値です。
よく聞く町工場などで「いいよ無料で」とか「数千円でいいよ」という話も確かにありますが、
これら全て超絶良心的対応といいますか、ほとんど付き合いや片手間レベルの場合に限る例外です。
(↑こういった類はビジネスではなく、良い意味で仲良し取引ですので、納期や精度の話になった途端に引き受けてくれなくなるのが大半で、基本ノークレームです)
話がそれてしまい、申し訳ないです。
戻します。
何かを作る時には必ず、
・材料費
・プログラム製作や製図の時間などの費用
・材質によっては専用の刃物費用
・メッキなどが必要であればその薬品費用、サイクルタイム費用
・加工機の使用費とサイクルタイム費用
・製造する人間の人件費
などが計算されます。
(時給1,000円の人が1時間かかったら原価1,000円、その他費用・・・という感じの計算です)
働く人が時給0円だとしても、その他費用は0円ではないですよね?
そして「製品の単価に影響する部分」として製作数が大きく関わり、更にそこから、
・年間発注数(年間発注Lot数は?毎月生産なのか?)
・1Lot発注数(一度の注文での最低数は?)
という数量が「割引」として計算されていきます。
毎月100個だけでは高くなってしまうから、
年間分(1200個)を一回で注文くれるのであれば割引されますよ~といった感じです。
皆さんがホームセンターなどで購入されているネジやパーツは、
弊社も製造しておりますが「年間で1億個以上の生産がされている品」だったりします。
ちなみに年間1億個は少ない部類で、イモネジ(ホーローネジ)などは「月産70億個」などです。
その数億個の生産を何社もが協力して生産し、
最終的にメーカーが全数検査を行って「同一の品」を量販店に卸し、
その量販店でお客さんが「ネジ1本15円(仮)」程度で購入出来ているというのが現実です。
■さてここからが本題です。
まず、仮に1億個を生産して初めて単価(1個当)15円という事を覚えておきましょう。
そしてそのネジは「発注しているメーカーのオリジナル製品」という事も覚えておきましょう。
ではそのメーカーが「製造元へ一式費用としていくら支払っている」と思いますか?
15×100,000,000=?
¥1,500,000,000(15億円)です。
考え方を変えると、そのメーカーが15億円で購入したネジを一本15円で分けてもらっているという事が、世の中の量産商品全般にいえる仕組みです。
更に考え方を変えると、
そのメーカーが「オリジナル製品を捌ける事に賭けて生産」しています。
ではギターの話に戻りましょう。
PRSというメーカーさんは、自社での加工品とは別に外注でオリジナルパーツを製作しています。
もし皆さんが何かを作っているメーカーだとして、
キャパ的にも必要数的にも超大量なオリジナル製品は必要ないですよね?
(といいますか、現実的に資金や他パーツの事も考えて無理に近いと思います)
そのため必然的に小ロット(少量発注)となります。
そして少量ですので、先程説明させて頂いた見積もり計算を行うと確実に高価なパーツになります。
いくつもの品が組み立って一つの製品になるブリッジなど、
オリジナルブリッジのオーダーで「1組単価20万円」でも決して高くありません。
そんなパーツ類をギター1本丸々オリジナルで埋め尽くして製作し、
たったの100万~や下手したら50万以下で販売している事が驚愕です。
もちろん一流メーカーですので月産の生産可能本数は個人工房さんなどに比べれば多いですが、
それでも単価が極端に下がるほどの数量を発注するとは思えません。
よくある「元々ブリッジ製作を行っているメーカーに少しセミオーダーしたオリジナル仕様」
といった低コストでのプチオリジナルではありませんので余計に凄まじい事です。
(楽器業界の一社のオリジナル製品の量産数は1,000/Lotでも多い方です)
長文となってしまいましたが、
まだまだこういった製品が出来るまでの「費用に関する仕組み」は理解されていません。
こういった事を理解しながらお店に並んでる商品を見てみると、少し考え方が変わるかもしれません。
私もまだまだ頑張るぞー!!
これからも応援宜しくおねがいします。
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